EXIBITION AND CONCEPT  展覧会と作品コンセプト
  GALLERY GEN Tracing the water stream

 

 

 

 

 

 

 

水を辿る

ギャラリー現(東京・銀座)

2009年9月28日(月)〜10月3日(土)

 

 

 

 

 

concept of art work
坂内美和子展 水を辿る
今回の個展によせて―個展コンセプト―

今回の制作で、私にはどうしても行きたかった場所がある。それは房総の佐原だ。
ここはかつて香取海と呼ばれた内海。房総から常陸まで広がる広大な水の土地だったという。
「海を通じて人と人を結びつける役割を担ったのは、海辺に生活の根拠を持ち、船で活動していた海民ー海の民です。こうした海の民こそが、日本列島の島と島、あるいは日本列島をアジアの諸地域に結びつけてきた」。
これは歴史家、網野善彦の書いた「海と列島の中世」(講談社学術文庫)の一節。この本によると、その海民の一大結節点が、私の住む同じ房総の佐原にあったという。そこにはつい最近まで水上生活者が暮らし、近代以前に九州はおろか、遠く朝鮮の済州島からも海女が訪れていたという。
実際に佐原を訪れてみると、水上生活者も朝鮮の海民もいたわけでもない。だけど、いまなお広大に広がる草原とそれを縫うように張り巡らされた水路、そしてあちこちに係留された船には、確かに自分の感性を開放してくれる何かがあった。

海、川。水の流れは、島と島をつなぎ、土地と土地をつなぎ、人の関係性を生む。心のゆらめきや念は、いっとき流され、そこから新しい何かが再び生まれる。そんな営みが繰り返されてきた。
マグノリア板を掘り起こし、できた痕跡。面と面があやなし、レイヤーをかたちづくる。私にはこの作業が、水の営みに重なるように見えてきた。
結びつけるために行う、彫りと塗り。水の交通路へと至る行為。
殺伐とした時代を、ふたたびつないでいくことが必要とされている。
だから、私は水を辿る。

坂内美和子

 

 

 

    

 

 
 作家HPトップへ戻る    総合トップ(アトリエMIWA)へ