concept of art work
坂内美和子展 ー森の環ー
今回の個展によせて―個展コンセプト―
支持体をキャンバスから木に変え、彫絵(carven painting)による2回目の個展です。シナやホウ、カツラの木板にアクリルや油彩で彩色し、描線の彫り起こしを加えたレイヤー構造で、さまざまなかたちとニュアンスを表現しています。
「われらは好戦的な森をもち、山々は世界最上のたくましいオークに恵まれる。幸せの島の確かな守りのために、広大な海の濠でぐるり囲われ、国家の安全と自然の誇りを宣告せんとその海はオークの船で堅固に守られている」。
これは17世紀の英国の詩人、エイブラハム・クーリーの詩です。
今回の制作にあたり、私はまさにこの詩そのものの場所に、日本で出会いました。それは九州の五島列島。
100年以上の年輪を重ね、徐々に朽ちていく木造の五輪教会。周囲には時代から取り残されたような深い木々、日本の土着文化にはない一神教に捧げる人々の敬虔さ、周囲のゆったりとした暮らし。そこにはまさに今の時代が失った尊厳が残っているように思いました。
人は大きな環の中で生き、次の時代へさまざまな想いを手渡していく。そのありようをまさに見たのです。
今回の展示のテーマは「森の環」。大作と小品がインスタレーション形式で一体となって協奏します。重層的なパースペクティブから、世界の本当のありようがかいま見えるものにしたいと思います。
坂内美和子
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