EXIBITION AND CONCEPT  展覧会と作品コンセプト
  AI GALLEY LIFE series 5

 

 

 

 

 

 

 

LIFE(生命)series 5

藍画廊(東京・京橋)

2005年7月11日(月)〜16日(土)

 

 

 

 

 

 

 

concept of art work
坂内美和子展 ―LIFE(生命)series 5―
今回の個展によせて―個展コンセプト―

 現在私たちはあらゆる面から劣等感、喪失感をたくさん抱え込みながら生きている。最近思うのだ。心から笑った日は一年のうちいったいどのくらいあるのだろうか? しっかりと大地を踏みしめて歩いているのだろうか? 太陽の光を燦々と浴びている時間は果たしてどれくらいあるのだろうか?

 この春、私は仕事の関係もあり、都心から千葉市に引っ越してきた。確かにここには海があると言えばある。しかし元々の海岸は埋め立てられ、工業地帯が多く、また団地もずらりと建ち並んでいる。そんな合間を縫うように公園もいちおうある。しかし何か人工的なこの景観に、居心地の悪さを感じるのは当然ではないだろうか? 元々人々は潮風に触れながら気持ちよくゆったりと過ごせる、より良い環境を求めてここに住み着いたはずだ。
 このように身近なところでも、自然破壊を目のあたりにしている。再開発という言葉をよく耳にするが、どこも似たり寄ったりの個性のない町づくりにしてしまっているのも事実だ。こういった現象は今始まったわけでもなく、しかも当分の間続くであろう。また日本各地では、さまざまな問題が山積みになっているのも付け加えなくてはならない。

 私は生命シリーズを6年ほど続けてテーマにしている。ますます世の中が暗い方向へ突き進んでいるためか、作品自体も徐々に黒をポイントに描くようになっていった。それは、黒がすべての色を集めたものということで生命を包括的に現せるということがあった。さらには、黒が示唆するさまざまに錯綜するものの根底にあるもの、例えば今の世の中に吹き出している暗さ、どうしようもなさ、そういったものを吐き出すように描いた。どうすれば歯止めが利くのか? どのようにすれば人間らしい心豊かな生活に戻れるのか? 絵を描きながらそんなことを考えていた。
 今回からは、そんな自分自身の気持ちをはつらつとさせたい、すがすがしいものにしたい、心機一転も兼ねて、ざわつき感はあるものの、明るく、パワーのある色もとり入れてみたい。そんな心境になった。こんな時代だからこそ、人々は今心豊かで、未来のある、生命に満ちあふれた明るさを求めていると思っている。これからの私の絵には、コーラルレッド、パーマネントグリーンといった明度の高い色は必要不可欠。それらはすべて「陰」から「陽」へ、つまり「陽」の部分を強くし、希望の見えなかった世界からこれから何かが始まるという上昇感への移行である。
 
 私の創作で転機になったのは『宙―Sora―』という作品。でも別にこれは空の青さでもなく、宇宙の黒でもない。コーラルレッドはこれまでポイント的に使っていたが、地として使うのは初めてだ。ここには、奇妙な生命のような形がくっきりと浮かび上がっている。ストロークで抽象的な形を様々に描いてきたが、ここまで明確に輪郭を持った形は初めてである。今回の個展の方向性はこの時に決まったようだ。
 沈み、何かを引き込むような黒ではなく、生命の力をオーラのように与える。明度の高い色彩、そしてキャンバスの中に息づく、命あるものたち、私は今回の絵で観る人に、今流行の「壊れた心」を解き放ってあげたいと思う。それが今の私の心境だ。

 それから私の作品はいつも連作で描いてはいるものの、それぞれが違った表情を見せている。その中でもう一つ注目してほしいのが『より確かなもの』。この作品だけは、初めから他の作品と描き方が違っていた。下地と仕上げの表現方法を極端に変えている。つまり、内にあるものと外にあるものの見え方をはっきりさせたかったのである。ここでは、人間は欲張りであり、さまざまな考えを持つ複雑な生き物だというものを、改めて自覚したかったからなのかもしれない。黒と白の線は、今回「陽」の役割を果たしてくれている。

 このように、より複雑化した社会現象を直に感じ取り、「陽」の要素を増やしていきたい。そんな思いを胸に制作してみた。

坂内美和子

 

 

  

 

    

 

 


   2005作品紹介ページへ

 



 
 作家HPトップへ戻る    総合トップ(アトリエMIWA)へ